インタビュー:労務プランニング井下事務所 井下英誉さん


【プロフィール】 井下 英誉(いのした ひでのり)
労務プランニング井下事務所(東京都新宿区) 代表
保有資格:社会保険労務士、PHPビジネスコーチ


インタビュアー横須賀 輝尚(以下、「イン」): これまでの開業した経緯や、現在の活動を教えて下さい。

井下 英誉さん(以下、「井下」): 私が組織心理学に興味を持ったきっかけは、学生時代に労働者が同じ状況下でもモチベーションの高い人と低い人がいるが、その要因は何なのかという授業で受けた時でした。

おもしろいと思うことを仕事にできればと思い人事コンサルタントを希望していたのですが、新卒でいきなりコンサルタントになるのは難しいことでした。ですが、できるだけ早いうちから人事労務関係の仕事に携わりたかったので、さまざまな資格を調べたていたところ、社会保険労務士が人材関係の仕事もできるということがわかり、社労士の資格を目指し始めました。
卒業と同時に社労士事務所に弟子入りすることができ、その年に資格を取得したのですが、直ぐにコンサルティング業務をやらせてもらえる訳なく、いわゆる昔ながらの事務所でしたので、来る日も来る日も手続き業務ばかりでした。3年間はそこで勤務し、もう学ぶことないなと思った頃に退職しました。

その後にある伝手でアウトソーシング会社の立ち上げに関わったんです。ちょうど、日本でアウトソーシングという言葉がはやり始めた時期でした。

イン:

それは何年ぐらい前ですか?

井下

14~5年前ですね。そのアウトソーシング会社は中堅・大手企業をターゲットにしていましたので、そちらで仕事をやっていく中で中堅・大手企業の人事業務や社内手続きの仕組みなど、さまざまなことを学べたのが非常に大きかったです。当時の社労士としてはとても異次元の世界にに身を置いていた感じがありました。
この仕事で3年程経過したころ、次はどうしようか考えた時に、自分はすでに新しい世界を見てしまったことで、普通に社労士事務所に戻ってもしょうがないなと思いました。これが28歳のことです。

イン:

そうですね。個人で大手の立ち上げをやってしまったら、ルーチンだけの業務というのは辛いものがありますね。

井下:

はい。そこで、資格を目指したときから漠然と目標としていた「独立」をすることに決めました。自分はコンサルができるわけでも、何か特化したものがあったわけでもないので武器がなかったのですが、最初からそれなりの組織体は作っていきたいと思っていたので、得意な中堅大手に営業して、手続のアウトソーシングから始めることにしました。

狙いは的中して、おかげ様で売り上げは右肩上がりにぐんぐん上がっていきました。ですが、それもうまくいっていたのは、6~7年ぐらいまででした。

イン:

中堅大手が相手だと任されるのも完全にバックオフィスみたいな感じになってしまいますよね。

井下:

そうです。私もスタッフも社労士として、もっと専門的なことをやりたくても、規模が大きいと、どうしても我々は手続きだけの代行屋になってしまいます。そこだけでは、そのうち限界がくると思いましたので、クライアント層を数百人規模に落としてみました。それが独立して7年目くらいのことです。
規模を下げると当然、人事部門が組織化されていない企業も増え、クライアント企業から就業規則や労務相談等の仕事も入って来ました。

イン:

確かに、そのくらいだと人事部のないところは多いですね。

井下:

はい。このような規模の会社ですと、大体は労働法専門の弁護士がついておらず、制度構築に外資系コンサルや日本の総研が入っているわけでもないので、我々でも入れるなと思い、就業規則・労務相談・各手続き全般的な提案をするようになりました。
ですが、数年前のリーマンショックを皮切りに、中堅・大手の顧客にも影響が出てきたため、小さな企業にも数多く相談役として関わっていきました。そこで、いくら就業規則を整備してもトラブルは減らず、社労士として、「法律だけをバックボーンとしてビジネスをやっていくには限界があるな」と感じ始めました。

そこは感情を持った人間が動くわけですから、規則で縛れば縛るだけ、そこからはみ出そうとする人が出てくるのは必然です。やはり、組織作りや人材開発などもちゃんとやらないと、トラブルはなくならないだろうと思いました。それが、この2~3年です。

手続き業の限界、コンサルの可能性

イン:

井下さんがメンタルヘルスの分野に興味を持ったきっかけは何ですか。

井下:

もともと社労士に興味を持ったのは学生時代の組織心理学からでしたので、メンタルヘルスはずっと気になっていました。

イン:

なるほど。確かに組織心理学とメンタルヘルスはすごく近いところにありますね。

井下:

はい。それに今、就業規則以外で私たちが心や感情面に焦点を当てる何かを展開をしていかないと、弁護士さんが本職で食べていけなくなった時に、労務という法律の市場に出てこられたら我々は適わないと思ったんです。
だとすると、法律のプロである弁護士が専門としていないメンタル分野を私たちがやることで差別化ができ、法律知識との相乗効果で強みとして戦えると思ったのがきっかけです。

イン:

そうですね。たしかに近年、弁護士が他の士業の業務へ介入してくるっていう噂は耳にします。そういう背景を下に社労士としてメンタルヘルスを今後の強みにしていこうと考えたということですか?

井下:

はい。そうですね。
もう一つ大きな理由があります。それまでのうちの営業スタイルが、給与計算などのアウトソーシング業務をやってる会社と組んで、紹介していただくようなビジネスモデルだったんです。
ですが、その方法だと「○○の方が安いからお前も安くしなくちゃ切る」とおっしゃるお客様の割合が多くなり、他社との値下げ合戦になってしまいます。そこで頑張って最終的にうちが仕事を引き受けることになっても、やっぱり利幅が薄くなっているんです。

イン:

そうですね。そういうお客様の中には、私たち士業のことをただの代行屋だと思っていて、金額次第で何でもやると勘違いされている方がいますね。

井下:

はい。それで従来のビジネスモデルでこのまま仕事を引き受けても、コスト削減がメインになってしまって、こちらの利益が下がる一方です。
そこを何とか変えたいと思ったときに、従業員側のスタンスでいろいろ考え、人を大事にしようと思っている会社であれば、働く環境の整備を積極的に行ってくれることになり、価格競争ではなく「井下事務所」を選んでくれるといった仮説が自分の中にありました。
それなら入口にメンタルヘルスを持ってくれば、必然的に研修や規程見直し等で役に立てる可能性ができ、仕事を引き受けるうえで手続きも値段競争を気にせず、うちにお願いすることに繋がるのではないかと思いました。

イン:

なるほどですね。確かに価格だけで競争する事務所は、ほとんどの場合売上が下がるっていますね。これは地方でも結構な割合で起きているようで、5年後なんか少し恐ろしいくらいです。
それに対して、手続きを無料にしてコンサルで報酬を頂いている人は売上が上がる傾向だそうです。なぜなら、コンサルティングとは別に面倒臭い手続きなんかの作業を無料でやってくれるのですから、社長さんからしたら「手続きもやってくれるの?なんて良いとこだ!」と思うので、井下さんの狙いは大正解ですね。

井下:

はい。特に規模の小さな会社ほど外部委託にすごく抵抗があるようなのですが専門知識を要するものに対しては、お金を払って頼むしかないという考えがあるようなので。

イン:

そうですね。10人未満の会社は大体が社労士顧問は基本とらないですし。頼むことがあってもせいぜい単発の依頼ですよね。

井下:

はい。おそらく社労士さん達が社労士業務に縛られているのではないかと思います。私は一応、社労士としてスタートしていますけど、元々は社会保険労務士に興味があったっていうよりは、その、人事労務の仕事に興味があったわけで。
最近は、メンタルヘルスの組織作りの仕事を中心に据えて、行く行くは「井下さん、社労士さんだったんですね。」と言われるのもいいかな、っていうのはありますね。

イン:

個人的意見なのですが、社労士さんは今後10人未満の会社といかに商売するかが課題だと思います。大体の方が給与計算とか手続きを考えれば50人以上の規模でないと顧問でがっつりいけないと考えますが、小さな会社も人選で悩んでいるようなので。

井下:

そうですね。10人未満の会社なんかも人事をピンポイントでコンサルするのは良いかもしれません。

より一流のスペシャリストになるために

イン:

今回QOLの認定講座を知ったきっかけを教えて下さい。

井下:

そうですね、以前から講師の森田さんとお付き合いしていたというのが講座を知るきっかけになりました。

イン:

そうですか。それでは、森田さんとお知り合いになったきっかけを教えてください。

井下:

はい。もともとは私のビジネスパートナーの人事コンサルタントが森田さんのセミナーに参加することになったことがきっかけでした。
ちょうど、その人事コンサルタントから「もし井下さんが社労士としてメンタルヘルスに興味があるのなら、そちらの分野でスペシャリストの森田さんの話を聞きに行きませんか?」と誘われたので、「あります。」と答え、森田さんのセミナーへ参加することになりました。

名刺交換をした際に、森田さんから「私は社労士さんと組んでメンタルヘルスや安全衛生分野の必要性を説いていきたい」というお気持ちを聞き、「それでしたら一緒に何かやりたいですね。」と話しました。それからしばらくして、今回のメンタルヘルスコンサルタントの養成を始めるとお話をいただきました。

イン:

井下さんが講座を受講しようと思った理由はなんですか?

井下:

そうですね。私は今まで社労士として業務をこなす中で、ある程度のことは自分で学習していたのですが、ことメンタルヘルスという分野に関しては、本を読んでもなかなか体系的に理解できず、自分の中で見えてこなかったんです。そうなると、メンタル面の問題を抱えたお客様にどう対処すれば良のかわかりませんでした。
そこで講座に参加して何かしらかたちが見えてくれば、それが一つの営業ツールとかになってくるだろうと思いったのが一番大きな理由ですね。

イン:

ありがとうございます。ぼんやりとしたメンタルヘルスのお仕事を体系化して、自分のものにしたかったということですね。

井下:

そうですね。

講師 森田 司氏の魅力とは?

イン:

今回の講座以外にもメンタルヘルスの講座はたくさんあると思うのですが、ほかの講座とか受けたり、比べたりされましたか。

井下:

そうですね、大阪商工会議所が行っているメンタルヘルス・マネジメント検定試験は最初の年に受験しましたし、関連のセミナーにも多数行きましたが、認定コンサルのような認定資格に関しては、森田さんが講師をされているということもあったので、是非受けてみたいと思いました。

実際に森田さんの講義を受けてみたら、言っていることが理論に基づいていて納得する部分が多かったので、その後に別のところで聞こうというのは、まったく考えなかったですね。

イン:

森田さんの仕事の取り組み方や考え方を聞いたら、付いていきたくなりますよね(笑)。

井下:

はい。メンタルヘルスって、どうしてもボランティア的な部分で捉える方が多いのですが、森田さんはそこをビジネスとして取り組まれていますね。たとえばどこが儲けるポイントなのかを教えていただけたり、マーケッターとしての考え方を伝える一方で、これは人を切り捨てるのではなく、生かすための仕事だと隠さずおっしゃって下さるので、なんか…すごく心に刺さりましたね。

イン:

そうですね。鬱などは10年前ほど前は話題にするのも、ちょっと引ける時代じゃないですか。なのに、森田さんはセミナー中とか「あなた鬱ですね!僕も鬱です!」と言ってしまうじゃないですか(笑)。

井下:

確かに言いますね(笑)。
現代人の7割近くが何かしらの疾患を抱えている世の中で共存を目指し、こういう雰囲気を作ってくれる森田さんにとても魅入られて、すごく良いなと思いました。

イン:

実際に受講していただきましたが、内容はいかがでしたか。

井下:

そうですね。やはり、ぼんやりとしていたものが、形として体系化できました。それに商品が見えましたね。

イン:

それは、ご自身で何を提案し、何をコンサルすればよいのかがわかったということですか?

井下:

そうですね。それが明確に見えたは、やはり認定コンサル養成講座のときでしたね。

イン:

講座を受講されて、サポート契約やライセンス契約を利用した活動はされましたか?

井下:

はい。実際、講座で使われたメンタルヘルスの資料を使って、森田さんにサポートしていただきながら社労士向きのセミナーを開催したりしました。それから一般企業でも説明会をさせていただいたりしました。
それは養成講座に参加したことをきっかけに、社労士向けに情報を発信というか、広げられたように思います。

イン:

ありがとうございます。
少し質問が重ってしまうのですが、認定コンサルとしての活動や実際に獲得したお客様の話があれば教えて下さい。

井下:

一番大きいのは、今年の6月から9月に掛けて開催した奨励金のセミナーですね。私は元々医療・介護・福祉とはうまくいかない社労士だったので、医療関係のお客様があまりいませんでした。

イン:

なぜ、その分野でうまくいかなかったのでしょうか?

井下:

まあ、自分は独立したのが20代だったので、そんな若造が偉そうなこと言っても先生方からすると、「なにを!」みたいなのもあったんだと思います(笑)

イン:

なるほど(笑)

井下:

ですので、それまで自分の中で医療・介護・福祉はうまくいかなかったのですが、いざセミナーを告知したら実際はニーズがあり、予想以上の申し込みがありました。
そういった中で病院や保育園、特別養護老人ホームなどでメンタルヘルスケア研修の契約や奨励金の契約、手続き契約などをいただき、そこから発展して就業規則の見直しなどもくるようになりました。

イン:

やっぱり、全部整備しなきゃいけないですからね。

井下:

そうですね。

気持ちさえあれば、未経験でも活躍できる

イン:

講座を受ける前に、講座を活かせるかどうか心配という方がいらっしゃるのですが、井下さんはいかがでしたか?

井下:

それはまったくなかったです。私、引き出しを増やすの大好きなんで!
どちらかというと、私の事務所スタッフが「代表、またなんか新しいこと始めてるよ…」という、後ろめたさというか(笑)。それぐらいです。

イン:

ありがとうございます。

それでは、この認定講座の良かった点などあれば挙げていただいてもらえますか?

井下:

そうですね。今回の講座は士業という同じ土俵で、同じ新しい市場を開拓したいという方々が集まったところが良かった部分ですね。仲間ができて心強いですし、励みにもなります。
あとは、同じ資格業でありながら、違う路線でやって行こうとする人が集まっていることが、すごく良かったですね。講座自体も人事制度みたいな、大きなものではなくて、さらに細分化されたものが吸収できたのは、私としては良かったですね。あとは、そうですね……。そもそも、悪かったという点が何も挙がらないので(笑)。

イン:

ありがとうございます(笑)。これもすべて森田さんのなせる業というか、すごく一生懸命やってくださったからだと思います。まあ、多少働きすぎだとは思うのですが(笑)。

井下:

確かに(笑)。

イン:

主催している方が言うのもなんですが、やはり森田さんは代えがきかない人なので、私としてはすごく自慢なんです。

井下:

だと思います。私も今までいろいろなセミナーをやらせていただいたのですが「わかりやすいけど、淡々と話していて感情ないよね」と指摘されたりすることが多かったんです。
森田さんは逆に、感情を思いっきり出して熱く語るのですが、すごく魅せられるんです。目が離せないという感じで。今ではセミナーを一緒にやらせていただくたびに見て、少し真似させていただいてます(笑)。

イン:

そうなんですか。実際、森田さんのような方と一緒にセミナーやってくれることってなかなかないと思います。
営業に関しても「一緒にやりませんか、一緒に営業行きませんか」と自分から誘っていますが、本来ならこちらがお願いしても実現できるか難しいですよね。

井下:

そうですね。私は実際に営業はご一緒したことがほとんどなく、ほとんどセミナーなのですが、一緒に営業された方からすると、絶対何か持ってかえってくれるから、圧倒されるらしいです。

イン:

なるほど。実はこの間、森田さんにどうしたらそんなに取れるのか聞いてみたんです。そうしたら、やっぱり森田さんなりのシナリオがすごくしっかりできていて、話しを聞いた人はとりあえず「これは会わなきゃまずいのかな…」みたいな感じで入っていっちゃうんです。それに担当者の気持ちをよく汲み取ってるんです。

井下:

森田さんがよく勉強会で就業規則や手続きを売るのではなく、相手が困っていることを読み取るのが大事だと仰っていました。困っていることは会社によって違うが、それを聞き出せるかどうかが勝負なんだと。

イン:

なるほど。私は、多くの社長さんがメンタルヘルスのついて「日常的におきている事だから、なってもしょうがない」と解釈して、治せるものだと気付いてないのだと思います。なので、これからはそこもちゃんと注意できて、尚且つ改善策を提案できたりしたらいいですね。

井下:

私もそう思います。

イン:

それでは最後に、この講座を受講しようか検討してる方にメッセージがあればお願いします。

井下:

私が今回森田さんと一緒に考えたり動いたりして感じたことは、この認定コンサルを受講するのにあたって、一から十まですべての面倒を見てくれるというようなスタンスでいるのでしたら、それは少し難しいでしょう。
つまり、ある程の度覚悟をしなければ、最終的に違ったとか損したとかと思われるということです。自分が、営業してお客様を増やしていくための徹底的に学ぶ場という感じです。

ですが、メンタルヘルスについてぼんやりとしたイメージしかない人でも、やる気さえあれば何とかなります。メンタルヘルスと聞いて既に精神疾患になってしまった人の対応といったイメージがあると思うのですが、QOLの考えるメンタルヘルスは、それだけではなく今プラスにある、健康状態にある人が不調者にならないようにするにはどうしたらよいかということです。いわゆる健康職場作りですね、そこの観点等をもう少し出されると、そうだよねって同感される方が増えると思います。

イン:

ご意見ありがとうございます。これから活動される実績など、また、ぜひ教えていただきたいと思います。今日はありがとうございました。

井下:

ありがとうございました。